歌いながら考える by 小春日

長年趣味で取り組んでいる「歌う」という行為、聴いた音楽のことなどを中心に書き留めています。

つい感情移入してしまう曲 ~ Men's Vocal Ensemble "寺漢" 第5回定期演奏会を振り返る②

今回のMen's Vocal Ensemble"寺漢"の演奏会の最後に採り上げた曲は、私にとって数少ない、歌いながらつい感情移入してしまう曲でした。

宮沢賢治の詩に鈴木憲雄さんが曲を付けた「永訣の朝」。

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私には、3歳違いの妹がいました。

しかし、母親の体から出てきた時に窒息状態になっており、必死の手当ての甲斐もなく、この世の中に出てほんの一瞬であちらの世界に旅立ってしまいました。

私がその事実を知ったのは、10歳を過ぎた頃のことでした。

賢治と妹との別れとは、ずいぶんと場面が異なりますが、私と妹の別れが同じような状況で訪れたとしたら・・・。この曲を歌うときは、そんな思いを抱いています。

初めて歌ったとき(寺漢ではなく、関西の男声合唱団でのことでした)もそうでしたし、今回寺漢で歌った時もそうでした。

今回の演奏会では、自分の妹以外にもう一人、歌いながら顔を思い出していた人がいました。大学時代、合唱を通じて知り合った学年が一つ下の女性です。先月、数年間続いた病との闘いの末に亡くなられたことを、SNSを通じて知りました。

闘病していたのは、福山。早く知っていれば、お見舞いにも行かれたのに・・・。

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そういえば、演奏会の直前に、コンマス氏が、自身が声楽家から受けたレッスンでの教えとして、詩や曲の世界に自分が入り込んではいけない、という趣旨を言われていたのを思い出しました。感情移入するのではなく、少し引いた視点から詩や曲の世界を描写する姿勢で臨むべきなのだそうです。やはりwarm heartだけではなく、cool headも必要なんですね。