終わりを告げる手紙
私が、合唱団への入団をきっかけに「歌う」という行為を始めてから、ちょうど27年の月日が経ちました。
私の歌う原点は、やはり大学で入った男声合唱団ですが、当時は、こんなに長い間歌い続けるとは思ってもいませんでした。
こうして歌い続けるきっかけとなった合唱団が、大学のものとは別のところにありました。
1990年代に結成された、「アラウンド・シンガーズ」です。
大学の後輩から誘いを受けて参加し、レコーディングや米国での演奏など、それまでにはない体験をすることができました。
また、この合唱団での出会いから、東京を離れた後も合唱を続けられる場所を得られましたし、声楽家にレッスンを受ける機会を得ることもできました。
その「アラウンド・シンガーズ」で結成時にマネジャーをされていた方から、今日、突然に手紙を受け取りました。
この合唱団が、最後の演奏会を開くために動き出す、と告げる手紙でした。
最後の機会、ということで一瞬心が動きましたが、演奏会も、それに向けた練習も場所は東京。この企画が成功に終わることを祈りながら、自身の参加は見送ることに決めました。
今関わっている広島の合唱団で、より良い演奏をするために力を注ぎ、自分の歌も磨いていく。そこに注力していきます。
歌います!(5月8日 呉市文化ホール)
次に出演する演奏会のご案内です。
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エリザベト音楽大学 同窓会呉支部による
4th エリザベト コンサート
2016年5月8日(日) 14:00開演(13:30開場) 呉市文化ホール
曲目、チケット問い合わせについては、添付したチラシをご参照ください。
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この演奏会に、「Men's Vocal Ensemble "寺漢"」が合唱で賛助出演します。
モーツァルトのミサ・ブレヴィス(KV65)と、S・ドブロゴスのテ・デウムを、エリザベト音大の卒業生で結成された「セシリアくれ合唱団」と合同で歌います。
オーケストラ付で演奏する貴重な機会。いい演奏目指して準備を進めています。
ようやく聴き慣れてきた
何を聴き慣れたかって?
それは、「自分の声」です。
録音した自分の声を聴いたとき、自分が骨伝いに感じているそれとの間にギャップを感じた経験、お持ちの方もいらっしゃることと思います。
私もそうでした。
声楽家から受けるレッスンや、合唱団の練習の模様を録っては、あとで復習として聴くのですが、自分が感じている声とは全く違う、芯のない、軽い声に愕然とする。そんな期間が長く続きました。
最近は、漸く耳が慣れてきて、「これが今の自分の声」と受け入れられるようになりました。どこを工夫すればどう変わるか、それを試していく土台がやっと出来ました。
今年に入って、演奏会でSoloやSoliをいただく機会が増えています。自分の声をしっかり振り返ることができるチャンスです。本番でしっかり歌い上げるのはもちろんのことですが、記録を残してこれから先の糧にすることも忘れないようにします。
次の演奏機会にもっといい歌を歌えるように。
驚きの結果
この3連休、福島では、「声楽アンサンブルコンテスト全国大会」が開催されていました。
各都道府県のアンサンブルコンテストは、この大会への推薦団体選考も兼ねて開かれるところが多いようですが、広島県では、全国大会と同じタイミングで開催されるのが常になっています。
その広島県の大会に、”Men's Vocal Ensemble"寺漢(てらおとこ)"”として、20日に参加してきました。
今回、寺漢が歌ったのは、
・Ave Maria (J. Holma) 2月の演奏会でも歌った、サックスと合せる曲
・Dulaman
の2曲でした。
Dulamanは、(ご存知の方も多いと思いますが)曲の大半がソロと合唱の掛け合いなんです。参考までにこちらをご覧ください。
で、そのソロを、なんと私が務めたのでした。
上のyoutubeを何度も聴き、書店にもあまり出回っていないゲール語の学習書を探し当てて発音をチェックするなどして練習を積み重ねてきました。
ちょっと噛みかけてその場を取り繕ったところもありますが、どうにか歌いきることができました。
そして、審査の結果は・・・
見事総合一位、グランプリを獲得しました。
HolmaのAve Mariaで、いいハーモニーが響いている瞬間がいくつもあったので感触はよかったのですが、Dulamanでの自分のソロがヒヤヒヤものだったため、結果はそれほど期待していませんでした。本当に驚きの結果でした。
これで、来年3月に福島で開かれる、声楽アンサンブルコンテスト全国大会への出場権を得ることとなりました。
この大会には、2008年の第1回大会に、別の団体で出場したことがあります。この1年、歌に磨きをかけて、福島でいい演奏をしたいと思っています。まずは、皆がスケジュールが合うか、ですが・・・。
10年の月日がたった・・・
長い間、男声合唱の世界を引っ張ってこられた、「協ちゃん」こと北村協一先生。
先生が天国に旅立たれたのは、2006年3月13日の深夜でした。
その日から、今日で10年が経過しました。
私が先生の指揮で初めて歌ったのは、22年前、大学を卒業してから参加した「アラウンド・シンガーズ」でのことでした。
それから同じ舞台に立つこと8回。大学時代から先生と向き合って来られた多くの先輩方に比べると場数こそ少ないですが、どのステージも強く記憶に残っています。
思い出深いのは、1996年にアラウンドで歌った間宮芳夫の「合唱のためのコンポジション 第3番」。あの曲でオーディションを受け、Soliに採用していただいたことで気に留められた方が多く現れ、その後、今まで歌い続けることができるきっかけになりました。
先生、少ない機会でしたが、出会えたことに感謝しています。
時間と力の許す限り、これからも歌い続けていきますので、温かく見守っててください。近いうちに、五月山にご挨拶に伺います。
ロマン派音楽との真剣勝負 ~Kammerchor Hiroshima Kantorei 第2回定期演奏会~
聖ヴァレンタイン・ディに引き続き、2週間ぶりに広島・流川教会で歌ってきました。
写真は会場設営前のもの。祭壇や演台などが撤去されて、ここを舞台にして歌いました。
この教会は2013年頃にリニューアルされましたが、歴史は長く、実は十字架には、71年前に被爆したときのこの教会の建材が使用されています。また写真にはありませんが、その当時の鐘も礼拝堂の片隅に設置されています。
この教会で今回催したのは、Kammerchor Hiroshima Kantoreiの2回目の演奏会でした。
2014年1月に、ロマン派をメインに取り組む合唱団として立ち上がった同団。
2015年2月に最初の演奏会を開催。その後、広島県合唱コンクールへのデビューを経て、今回、2回目の演奏会開催となりました。
合唱団立ち上げの趣旨を貫いて、今回の演奏会もロマン派の曲で固めたプログラム。
流川教会の響きの良さにも助けられ、細かい傷はあったものの全体としてはいい演奏会だったと振り返ることができそうな感覚を持って終演しました。
一夜明けて、新たなスタートです。
もっといい音楽を奏でられるよう、取り組む課題は一杯あります。
ロマン派音楽との真剣勝負、まだまだこれからも続きます。
つい感情移入してしまう曲 ~ Men's Vocal Ensemble "寺漢" 第5回定期演奏会を振り返る②
今回のMen's Vocal Ensemble"寺漢"の演奏会の最後に採り上げた曲は、私にとって数少ない、歌いながらつい感情移入してしまう曲でした。
宮沢賢治の詩に鈴木憲雄さんが曲を付けた「永訣の朝」。
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私には、3歳違いの妹がいました。
しかし、母親の体から出てきた時に窒息状態になっており、必死の手当ての甲斐もなく、この世の中に出てほんの一瞬であちらの世界に旅立ってしまいました。
私がその事実を知ったのは、10歳を過ぎた頃のことでした。
賢治と妹との別れとは、ずいぶんと場面が異なりますが、私と妹の別れが同じような状況で訪れたとしたら・・・。この曲を歌うときは、そんな思いを抱いています。
初めて歌ったとき(寺漢ではなく、関西の男声合唱団でのことでした)もそうでしたし、今回寺漢で歌った時もそうでした。
今回の演奏会では、自分の妹以外にもう一人、歌いながら顔を思い出していた人がいました。大学時代、合唱を通じて知り合った学年が一つ下の女性です。先月、数年間続いた病との闘いの末に亡くなられたことを、SNSを通じて知りました。
闘病していたのは、福山。早く知っていれば、お見舞いにも行かれたのに・・・。
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そういえば、演奏会の直前に、コンマス氏が、自身が声楽家から受けたレッスンでの教えとして、詩や曲の世界に自分が入り込んではいけない、という趣旨を言われていたのを思い出しました。感情移入するのではなく、少し引いた視点から詩や曲の世界を描写する姿勢で臨むべきなのだそうです。やはりwarm heartだけではなく、cool headも必要なんですね。